小説 タイトル:僕は一体何者だ②

月曜日の朝、大学は決まって憂鬱だ。興味のない専攻内容の授業をこなす。大卒の肩書を得る義務作業でしかない。こんなことを言ったら、専攻内容に興味を持って大学生活を送っているクラスメイトに失礼だ。大体、興味がないなら大学を辞めてしまえばいい。他ならぬ両親が稼いだお金で大学に行ってるのだ。親の気持ちは考えたことがあるのか?

 

大学ではいつも通り、黒岩亮介と講義を受ける。亮介とは1年近くの仲だ。亮介とは英語の再履修の講義で1年の秋学期に仲良くなった。亮介はいつものように講義を聞かずソシャゲをしている。専攻内容への興味は薄いようだ。相変わらず、大学とバイトと趣味のバスケットボールとの生活を送っている。専攻内容への興味が強く感じられないという点で、亮介と倍也は気が合った。倍也は講義を聞くために、ノートを開いた。白板の文字を写す。まるで暗号みたいだ。こんなことするために大学に行ったわけではない。そんな思いを飲み込みながら、タスクをこなすかのような気持ちでノートを写す。

 

「後でノート見せてくれへん?」

亮介が倍也に尋ねる。いつものことだ。亮介は倍也がなんだかんだでノートを取る性格であることを知っているからか、ノートを取らない。そもそも授業を聞かない。出席はするが、決まってソシャゲに目を移している。

 

「いいよ、全然。あ、今日も送ってくれたりするかな?」

倍也が返答する。亮介は家に車が2台あるわけだが、1台は父親が職場に行くのに使い、1台は家族兼用の車となっている。亮介は弟が高校2年生で、妹が中学2年生なこともあり、更に母親は職場から自宅まで電車で通勤しているため、1台の車は事実上亮介の所有物となっている。いつものことだ。

 

倍也は亮介のことが友達として好きだった。多少の礼節をわきまえながら、気を遣わず何でも話せる関係でいられたからだ。

 

講義を終えるチャイムが鳴った。亮介もソシャゲの画面を閉じて、ノートを写すことに専念している。そして、講義の終わりに必ず行う練習問題を解く。倍也から写させてもらったノートを見ながら、そして倍也が解いた回答も早書きで写している。

 

なんだかんだで真面目な一面もあるのが、倍也の性質かもしれない。確かに提出物の期限は守る学生なわけだし、授業はわりと昔から真面目に受ける一面もある。専攻内容に対する意欲は失ったものの、最低限は守りながら生きている。