小説 タイトル:僕は一体何者だ③

時刻は16時40分、帰りのバスを待つ大学生でごった返す学生を見ながら、少しだけ勝ち誇った気分を抱きながら、学内の駐車場に向かって、亮介と倍也は歩いていく。サークル活動など二人とも最初はしていたが、すぐに幽霊部員になったので、サークル活動なぞしていない。サークルでキャッキャ盛り上がる男女のグループから少しだけ目を逸らしながら、倍也は亮介に話しかけた。

 

「合コン、どうなったの?女の子ほんまに来てくれるの?」

 

倍也には1年弱の付き合いで何故亮介に彼女が出来ないのかわかった気がする。亮介が女性には奥手なことと、所謂面食いな一面があるからである。あー彼女欲しいなー、今年の夏は女の子と過ごしたいな~と続けざまに独り言を言う亮介の横顔を見ながら冷静に分析する。沈着ぶってる倍也だって大学生になってから彼女が出来たことはないのだが。

 

「今、幹事の美由紀に連絡している所だから、美由紀に女の子呼んでもらってるところ、だからもう少し待っててほしい。美由紀から時期に連絡が来ると思うから。」

 

倍也が返答する。美由紀とは倍也の幼馴染のことである。親同士の仲が良く、幼稚園に入る前から双子の兄弟のように育ってきた間柄である。高校生の頃から、めっきりと会話が減ってきたが、女子大に進学したため出会いがないと嘆く美由紀と工学部のため、女性が少なく出会いがないと嘆く2人の需要と供給が一致した結果、合コンが開かれることになろうとしている。

 

「でも、お前可愛い子がいいんだろ?可愛い子って大体イケメンの彼氏いるじゃん。それが女子大生ってものじゃん。」

 

倍也が亮介に言う。亮介が答える。

 

「可愛い子がいいのは当たり前だろ。どうしてもってわけじゃないけど、可愛いか可愛くないかなら可愛い方がいいに決まってる。とにかく、合コン頼んだぞ。俺の夏がかかってるんだよ」

 

「だったらイケメンの彼氏から奪えばいいじゃん」

 

「お前、それ最低だぞ。」

 

倍也のブラックジョークに亮介が笑いながら答える。倍也は時々こういったブラックジョークを言う癖がある。人によってはたとえ冗談だとしても不誠実だと取られかねない言葉だが、亮介はまたかって表情をしながらいつも受け流す。倍也もまた、そんな亮介の懐の深い一面が友達として好きだったりする。

 

赤い軽自動車の前に着く。亮介が車のドアのロックを解除し、運転席に乗り込む。それを確認しながら、倍也がもう一方のドアを開けて、運転席の隣に乗り込む。時間は午後17時、季節が7月だということもあり、まだまだ夕日が沈む気配もない。外は明るい。