小説 タイトル:僕は一体何者だ⑤

十勝倍也は亮介に「送ってくれてありがとう、じゃあ、また明日。」と告げた後、バイト先の飲食店に向かった。バイト先は歩いて15分ほどの距離にある。時刻は午後18時20分。今日のシフトは19時から23時までだったので、少しだけ時間がある。時間を潰そうと思い、喫煙スペースへと足取りを動かし、喫煙スペースに到着した後、愛煙しているParamentに火をつけた。スマホでLINEを確認する。美由紀に送ったLINEの既読はまだついていない。「合コンのメンバー集まりそう?」と朝に送ってから、既読がまだついていない。学校が忙しいのだろう。美由紀は部活もしているから、暇人の倍也と違い、大学生活が忙しい。

 

月曜日の今日、倍也は少しだけ、バイトに向かう足取りが軽い。今日一緒にシフト入る相沢さんが可愛くて気になっている、からではなくバイトリーダーは毎週月曜日に休みを取っているため居ないからだ。倍也はバイトリーダーのことが苦手だ。理由はバイトのミスに対して怒鳴るからである。また、自分は論理的な性格だと自称しておきながら、機嫌が良い日と悪い日の差が激しく、自分の内なる感情である機嫌の良し悪しに流される矛盾性と精神力の弱さにもウンザリさせられている。

 

バイトリーダーの中里雄二は、難関国立大学卒業後、弁護士になるという夢を追い、飲食店でアルバイトをしながら、弁護士という夢を追っている。38歳になった今も、司法試験の勉強をしながら、アルバイトをしている。バイトのユニフォームもロクすっぽ洗濯をせず、シワでよれよれになり、丸々太った中里の後ろ姿を見ていると、倍也はリスクを負って夢を追いかけることの怖さを感じずにはいられない。倍也は大学を退学して興味のある専攻である、心理学部のある大学への再受験を頭の中では、画策しているが、中里のそんな後ろ姿が、倍也の決断力を弱めている一因であることは否めない。

 

倍也は愛煙しているParamentの火を消しながら、いつもよりほんの少し軽い足取りで、バイト先へと向かうのであった。時刻は18時半である。

 

愛煙しているParamentの火を消しながら、いつもよりほんの少しだけ軽い足取りで、倍也はバイト先の飲食店へと向かうのであった。